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有機溶剤等の消費量が少量の場合における適用除外規定

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消費が少量の場合の適用除外

有機溶剤は比較的多くの事業所で使用している物質かと思います。そして、該当する有機溶剤には有機溶剤中毒予防規則が適用されます。その場合、換気装置の設置や作業主任者の選任、掲示など様々な対応の実施義務が発生します。

そこで、この規則の第二条からいきなり「適用の除外」なる項目が出てきて、適用除外を是非検討したいと考える事業者さんも多いのではないでしょうか。

第二条と第三条の違いから理解する

有機溶剤等の消費量が少量の場合の適用除外規定は第二条と第三条が該当しますが、この2つの規定がとても似ていることで混乱してしまうことが多いようです。これらの違いを理解して状況に応じた使い分けができるようになりたいものです。
第二条と第三条を比較しながら、理解を深めていきましょう。

第二条と第三条の第一項までの部分を以下に引用しました。

第二条 第二章、第三章、第四章中第十九条、第十九条の二及び第二十四条から第二十六条まで、第七章並びに第九章の規定は、事業者が前条第一項第六号ハからルまでのいずれかに掲げる業務に労働者を従事させる場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該業務については、適用しない。

一 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量が、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる式により計算した量(以下「有機溶剤等の許容消費量」という。)を超えないとき。

二 タンク等の内部において当該業務に労働者を従事させる場合で、一日に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費量を超えないとき。

第三条 この省令(第四章中第二十七条及び第八章を除く。)は、事業者が第一条第一項第六号ハからルまでのいずれかに掲げる業務に労働者を従事させる場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該業務については、適用しない。この場合において、事業者は、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)の認定を受けなければならない。

一 屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費量を常態として超えないとき。

二 タンク等の内部において当該業務に労働者を従事させる場合で、一日に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費量を常に超えないとき。

適用除外の対象業務は?

適用の除外の対象業務は、以下のように第二条と第三条で同じです。
これらの業務に該当しなければ、いきなり終了なので、まずはこれを確認するのが良いですね。

適用の除外の対象となる業務(第二条、第三条)

ハ 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
ニ 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
ホ 有機溶剤等を用いて行うつや出し、防水その他物の面の加工の業務
ヘ 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務
ト 接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着の業務
チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務
リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗装の業務を除く。)
ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
ル 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務

適用除外の条件の3つのポイント

次に、第二条と第三条を比較しながら、適用除外の条件について理解していきます。以下の3つのポイントで比較しながら理解を進め、皆さんの事業所は、第二条か第三条かどちらを選択するのかをご判断いただければよいと思います。

比較ポイント①:判断の主体
比較ポイント②:除外の範囲
比較ポイント③:適用の基準

比較ポイント①:判断の主体

一つ目は、誰が適用除外の判断をするかという点です。

第二条は、事業場で判断することができます。一方、第三条は、労働基準監督署長の認定が必要です。

第二条:事業場で判断する
第三条:労働基準監督署長が判断(認定)する

比較ポイント②:除外の範囲

2つ目は、適用の除外が認められる範囲がどの程度かという点です。

第二条は限定的な範囲でのみの適用除外です。一方、第三条は、省令の大部分が適用除外となります。

第二条:限定的
第三条:大部分

以下に、第二条、第三条それぞれの適用の除外対象範囲をまとめておきます。第三条は列挙したもの以外の規定が除外対象範囲であることに注意してください。

第二条の適用除外の範囲

第二章「設備」
第三章「換気装置の性能等」
第四章第十九条「有機溶剤作業主任者の選任」
第十九条の二「有機溶剤作業主任者の職務」
第二十四条「掲示」
第二十五条「有機溶剤等区分の表示」
第二十六条「タンク内作業」
第七章「保護具」
第九章「有機溶剤作業主任者技能講習」

第三条の適用除外の範囲

第四章第二十七条 事故の場合の退避等
第八章 有機溶剤の貯蔵及び空容器の処理 
以外の規定

以下の表に、第二条と第三条を比較してみました。
適用除外の範囲に〇をつけています。第三条の方が除外範囲が広いことが分かりますね。第二条は、第五章(測定)と第六章(健康診断)が除外されない点は、負担的には大きいかと思います。

 第二条第三条
第一章(総則)除外
第二章(設備)除外除外
第三章(換気装置の性能等除外除外
第四章(管理)一部除外一部除外
第五章(測定)除外
第六章(健康診断)除外
第七章(保護具)除外除外
第八章(有機溶剤の貯蔵及びから容器の処理)
第九章(有機溶剤作業主任者技能講習)除外除外

比較ポイント③:適用の基準

第二条と三条では、適用基準の厳しさが異なります。具体的には、許容消費量を超えない状態がどの程度あれば適用できるかという点です。

第二条は、許容消費量を超えない状態が一時的のものであっても適用されます。一方、第三条は、常態として、又は常に超えない状態である場合に限り適用されます。

第二条:一時的に超えないものでも適用
第三条:常態として、常に超えないものに限り適用

3つの比較ポイントに分けて、第二条と第三条の違いを以下の表にまとめました。

第二条第三条
判断の主体事業所労働基準監督署
除外の範囲限定的大部分
判断の基準一時的に超えないものでも適用常に超えないものに限り適用

ここから先は、作業場所による消費量の評価方法の違いについて説明していきます。これは、第二条、第三条ともに同じように含まれている第一号、第二号についての解説です。

作業場所による消費量の評価方法の違い(第一号、第二号)

第二条と第三条ともに、第一項の第一号と第二号はほぼ同じ内容で、「第一号:タンク等の内部以外の場所」か「第二号:タンク等の内部」に場合分けされています。そして、それぞれの場所での適用の除外の条件が記されています。

第一項 ー 第一号:タンク等の内部以外の場所
     L 第二号:タンク等の内部

タンク等の内部以外の場所(第一号)

以下は、第一号の条文です。タンク等の内部以外の場所の適用除外の条件は以下です。

一 屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費量を常態として超えないとき。

有機溶剤等の許容消費量の計算式は以下の通りです。

消費する有機溶剤等の区分有機溶剤等の許容消費量
第一種有機溶剤等W=(1/15)×A
第二種有機溶剤等W=(2/5)×A
第三種有機溶剤等W=(3/2)×A

備考 この表において、W及びAは、それぞれ次の数値を表わすものとする。
W:有機溶剤等の許容消費量(単位 グラム)
A:作業場の気積(床面から四メートルを超える高さにある空間を除く。単位 立方メートル)。
ただし、気積が百五十立方メートルを超える場合は、百五十立方メートルとする。

許容消費量の計算

数式の通り計算して、許容消費量を算出して、使用量との比較で超えるか超えないかの判断をすればよいのです。その際の細かい注意点を補足しておきます。

  • 気積の計算では、部屋の天井がいくら高くても4mで計算し、気積(A)は最大150㎥とする。
  • 計算は、種ごとの合計で考えるため、物質ごとに適用除外の評価はできない。たとえ個々の物質が少量であっても、それらすべての合計使用量と許容消費量の比較となります。合計使用量が許容消費量を超える場合は、すべての物質に対して、有機則が適用される。
  • 「作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量」は、1日に消費する有機溶剤等の量を有機溶剤業務を行う時間で割って、1日の平均値として計算すればよい。

タンク等の内部(第二号)

二 タンク等の内部において当該業務に労働者を従事させる場合で、一日に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費量を常に超えないとき。

第一号と違うのは、「一日に消費する有機溶剤等の量」という点です。許容消費量の計算は、第一号の場合と同じです。

第一号と第二号の違いは、有機溶剤等の許容消費量との比較対象が第一号は、「作業時間1時間」に対して、第二号は、「1日に」になるところです。第二号の方がより厳しい評価基準となります。

以下の表に第一号と第二号の比較をしてみました。

第一号第二号
許容消費量と比較する消費量作業時間1時間一日

タンク等の内部の定義

なお、第一号か第二号かのどちらに該当するかを判断するには、タンク等の内部の定義を理解している必要があります。

タンク等の内部の定義は、第二条第一項第一号に書いてあります。

タンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)

タンク等の内部(第二条第一項第二号)
  • 地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場
  • 船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部
  • 保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部
  • 前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所
    • 三 タンクの内部
    • 四 ピツトの内部
    • 五 坑の内部
    • 六 ずい道の内部
    • 七 暗きよ又はマンホールの内部
    • 八 箱げたの内部
    • 九 ダクトの内部
    • 十 水管の内部
    • 十一 屋内作業場及び前各号に掲げる場所のほか、通風が不十分な場所

まず、一般的な屋内作業場の場合は、「地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場」を疑ってください。というのは、「通風が不十分な屋内作業場」の定義は、天井、床及び習癖の総面積に対する直接外気に向かって解放されている窓その他の開口部の面積の比率(開口率)が三%以下の屋内作業場と解釈されているからです。

事業場の屋内作業場で、窓がない場合は結構多い、たとえ窓があっても、空かないタイプの窓だったり、作業内容によっては窓を開けられない状況も多いと思います。そういう状況を考えると、屋内作業場でも第二号に分類される場合は、結構多いのではないかと思います。

認定の必要性(第三条第一項)

第三条の適用の除外が認められるためには、所轄労働基準監督署長の認定が必要です。これは第二条と大きく違うところです。

この場合において、事業者は、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)の認定を受けなければならない。

第三条の適用の除外は、所轄労働基準監督署長の認定を受けなければなりません。第三条は、適用の除外範囲が広いため、事業所が適用除外の判断を正しくできなかった場合のリスクが高いためです。

認定を受けるにはどうすればよいか?

所轄労働基準監督署長による第三条の適用の除外認定を得るにはどうしたらいいのでしょうか?
第四条に記されています。

第四条 前条第一項の認定(以下この条において「認定」という。)を受けようとする事業者は、有機溶剤中毒予防規則一部適用除外認定申請書(様式第一号)に作業場の見取図を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

二種類の書類を所轄の労働基準監督署に提出することが必要です。できれば書類を持参して、口頭で説明するのがよいでしょう。

第三条の適用の除外に必要な書類(第四条第一項)

労働基準監督署長による認定はどのように行われるか?

2 所轄労働基準監督署長は、前項の申請書の提出を受けた場合において、認定をし、又はしないことを決定したときは、遅滞なく、文書でその旨を当該事業者に通知しなければならない。

認定の結果については、文書で通知するということは書かれていますが、認定までの審査がどのように行われるかまでは記載されていません。

書類審査だけで終わるのか、実地審査もするのか?その内容によって、企業側の負担が変わるので気になるところですよね。

実地審査は行われる

労働基準監督署長による認定は各事業所での判断ミスを防ぐために、労基署職員が代わりに行うものであるため、現場を見ないと正しい判断ができません。認定作業は、規定の適用関係を明確にするために行われるものと考えれば当然でしょう。

使用量のデータが必要

「有機溶剤等の許容消費量を常態として超えないとき」を確認するために、過去三カ月間の有機溶剤の消費量のデータが必要です。過去のデータが必要であることから、新規作業に第三条を適用することは困難でしょう。第三条の認定を目指したい場合は、計画的に使用量のデータを蓄積しておきましょう。

認定を受けた後が大事

認定を受けたからと言って、それが免罪符のようになり、なんでもありになってしまう。使用量が増加する可能性もあるでしょう。たとえ認定後であっても、業務内容の変更等により認定事由に該当する事実がなくなった場合は、認定が取り消されます。

使用量が増えたにも関わらず、何の対策も行わずにそのまま作業を継続し、作業者に健康障害が発生してしまうような事態は避けなければなりません。認定を受けた者としての責任として、日常的に使用量の管理をし、許容消費量を超えないようにコントロールすることが必要です。

また、できれば年1回でも作業環境測定を実施して、作業環境に問題がないことを示すデータを取っておくことをお勧めします。安全性を示す客観的データがあれば、問題が生じた場合や、従業員から不安の声があがったときなどに大いに役に立つでしょう。

あくまで目的は作業者の安全の確保です。認定が目的になってしまわないようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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