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公立中高一貫校に合格させる塾は何を教えているのか

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公立中高一貫校という選択肢

2025年4月、愛知県においても県立の中高一貫校が開校しました。 明和高校付属中、半田高校付属中、刈谷高校付属中、津島高校付属中の4校です。愛知県の在住の方は、公立中高一貫校という選択肢も増えたんじゃないかと思います。

実は、東京では2000年くらいから公立中高一貫校が開校し始めています。ようやく愛知県にもその流れが来たようです。もともと中高一貫校は、「ゆとり教育」の一環として提案されましたが、徐々に大学進学実績を伸ばし、進学校として注目を集めるようになりました。

子を持つ親としては、子どもの進路の選択肢として前向きに考えてみたいと思うかもしれません。ただ、何も考えずに手を出すのは危険です。まずはしっかりと調べることが大事です。
ということで、今回の選書になりました。本書を書いたのは、教育ジャーナリスのおおたとしまささん。教育関連でたくさんの著作があります。

本書は公立中高一貫校をご検討の親御さんは読んでいて損はないと思います。お時間のない方は、今回の記事をご参考にしていただけると嬉しいです。

それではまとめていきましょう。

中高一貫校が選ばれる理由

初めに中高一貫校が選ばれる理由を整理したいと思います。大きく3つにまとめてみました。

  • 質の高い教育
  • 幅広い異年齢集団に身を置ける
  • 「中だるみ」ができる

質の高い教育

質の高い教育を求めて、公立中高一貫校が選ばれるという点があります。

文部省の指定を受けたSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定を受けている学校もあります。そこでは、将来の国際的な科学技術関係人材を育成するため、学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践や課題研究の推進、観察、実験等を通じた体験的・問題解決的な学習など、先進的な理数教育に取り組めます。明らかにこれまでの中学校、高校とは異なるカリキュラムを用意しており、次世代のリーダーを育成しようという意欲が感じれます。

幅広い異年齢集団に身を置ける

6年という幅広い異年齢集団に早い段階で身を置けるということも、選ばれる理由です。

中学校1年生の時点で、高校3年生と同じ学校に身を置くことで、彼らの姿を間近で見ることができます。いわゆる「大人な」先輩を見ることで、そこから得る刺激や学びは大きい。また、5年後の自分の未来予想もでき、それに向かって努力することもできます。

「中だるみ」ができる

じっくりと自分なりの価値観を形成することができる

中学3年の時期は思春期にあたり、この時期はいろんなことを体験し、自らの頭で必死に考える経験を通して、自分なりの価値観を形成する大事な時期です。高校受験をする場合は、受検モード一色になり、そんな余裕はありません。受験勉強によって精神的に自立するチャンスを逃すかもしれません。中高一貫校の場合は、高校受験に時間を取られることがないため、その大切な時期にじっくりと価値観の形成に時間を充てることができます。

じっくりと抽象的思考を訓練できる

子どもの脳は11歳くらいで認知能力が「具体的操作期」から「形式的操作期」に大きく変わる時期と言われています。初等教育では具体的に見える事象について考える力をつけ、中等教育では抽象的な思考を訓練する時期です。ところが中等教育のど真ん中に高校受験が入ってしまい、中等教育にじっくりと時間をかけられていないというのが現状です。中高一貫校であれば、そのようなギャップがないため、じっくりと中等教育での代数や化学などの抽象的思考の訓練に時間を充てることができます。

どんな人材を求めているのか?

公立中高一貫校が求める人材を表すキーワード、それは「リーダー」です。これからの時代を引っ張っていく「リーダー」の育成を方針としています。

また、愛知県の中高一貫教育導入方針は、「チェンジ・メーカーを育てる」です。これからの時代は、それぞれの個性や能力を発揮し、様々な場面で変化を起こすことができる人材の育成を方針としています。

これからの時代は、「世の中に変化を起こせるリーダー」そんな力を持った人材が求められており、そのような人材を育成しようとしているのです。したがって、受検生はそのような人材に適した能力を持っているかどうか、そういった観点から試されるわけです。

受検生が求められる能力は?

学校としては、そういった人材を育てたいわけですから、一定レベル以上の素質、能力、ポテンシャルを持った生徒を選抜したいわけです。では、受検生が選抜されるために必要な能力は何でしょうか?

それは、「自分で考え、意見をまとめる力」です。これは「世の中に変化を起こせるリーダー」の必須条件ですよね。適性検査ではその能力が測られることになりますから、受検対策を通じて「自分で考えて、意見をまとめる力」を鍛えることを目標として取り組むとよいでしょう。

では、「自分で考えて、意見をまとめる力」を養うには何が必要でしょうか?それに関して必要な要素を以下の3点にまとめてみました。

  • 教科書+20%の知識
  • 資料を読む力
  • 作文を書く力

教科書+20%の知識

自分で考え、意見をまとめるには、ベースとなる知識がなければ不可能です。知識は多い方が、良質なアウトプットが期待できます。そのため、少なくとも教科書レベル+20%程度の知識が必要となります。なお、私立中高一貫校を目指すなら、上位校なら、教科書+100%以上の知識量が必要だそうです。これと比べれば、公立中高一貫校は知識量よりも考える力に重きを置いていることが分かります。

資料を読む力

現代社会では、情報を得ること自体はそんなに難しくないのかもしれません。むしろ得られた情報を正確に理解、解釈する能力の方が求められています。あふれかえった情報に振り回されてしまわないように、まずは、情報を正確に解釈する能力が求められます。それには、基本的な理解力、読解力が求められます。受検問題では、資料は表やグラフ、文章がたくさん出てきますので、落ち着いて資料、文章を読み解く力が求められます。

作文を書く力

情報を正確に解釈できたら、まとめることが必要です。受検問題は記述式ですから、まずは文章として表現する能力が必要です。それには、基本的な国語力や要約力、思考を整理する力が求められます。資料から読み取れるポイントを理解し、必要な要素を正確に書き出す。また、減点されないように漢字を正確に書くことも重要です。

下の図は、「自分で考えて、意見をまとめる力」を支える3つの要素のイメージ図です。

勉強方法は?

受検生が求められる能力を伸ばすために、日々の勉強のコツをまとめてみました。実際に公立中高一貫校対策の塾で指導されている内容を含んでいます。

  • 本質的な理解を促す
  • 日本語能力をつける
  • 抜け目のない答案を作成する

本質的な理解を促す

物事の本質を理解できるような教育を心がけるとよいでしょう。単なる知識の詰め込みではなく、その知識のバックグラウンドや理由などをゆっくりと説明してあげる。じっくり説明しながらたくさん寄り道をして理解を深める方法が本質的な理解を促すことにつながります。塾での指導も、そこに重点を置いており、授業で取り扱う問題の数よりも、それに関連する知識を幅広く扱うことを重視しているようです。

日本語能力をつける

しっかりと読むことができないといけないので、読書の習慣がある子は有利です。適性検査ではかなりの長文も出題されます。文章の量がかなり多いので、苦手意識なく文章を読める方が良いでしょう。欲を言うとどんな種類の文章でも読めるのが良いでしょう。ストーリー性のあるお話から、科学的な読みもの、さらには家電製品についてくる取扱説明書など、なんでも読めることはとても有利です。

また、家庭での会話、話し方を意識して、正しい日本語を話せるように日々の生活から習慣づけていくのもよいことです。

抜け目のない答案を作成する

記述式問題では、問題から読み取ったことを正確に記述することが求められます。その際は、必ず書くべき要素の数を確認するなど、明確に書くべき内容を整理してから答案作成をする癖をつけることが良いでしょう。例えば、「いりたまご」という文章作成ポイントを身につけさせる。「い」は意見。「り」は理由。「た」は体験。「ま」はまとめ。「ご」は誤字脱字。また、漢字をしっかり覚えて正確に書く訓練もしておくべきでしょう。受検のテクニックとしては、問題の難易度を短時間で見極けて解答する優先順をつける訓練も塾では行われているようです。

まとめ

適性検査から読み取れること

ここまで述べてきたように公立中高一貫校で行われる適性検査は、これまでの受験で行われてきた詰込み型の勉強と一線を画しています。それは、学校を運営する側の教育方針が強く反映された結果なのではないでしょうか。つまり、「世の中に変化を起こせるリーダーを育てていきます」という意思表示が試験内容に表れているように見えます。教育機関は子どもたちがこれからの時代を乗り越えていけるように、本気で教育の在り方を変えようとしているのだと思いました。

わが子を受検させるべきか

自分の子供を公立中高一貫校に受検させるべきかどうかというと、それは子供次第ですよね。受検は少なからず子どもに負担を強いることになります。「こんな学校があるみたいだよ。」「ほかの学校とこういうところが違うみたいだよ」といった感じでざっくりと、存在を知ってもらうことから始めればいいんじゃないでしょうか。最終的には、本人が興味を持つかどうかです。

決して、親の都合で受検させてはいけません、子どもの自主性を損なってしまいます。子供と向き合っていく中で、子どもの興味あることや夢を実現するために公立中高一貫校が良い選択肢であれば、きっと子供もそれを理解して興味を持つことでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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