行動科学マネジメントという解決方法
今回は、行動科学マネジメントの第一人者である、石田淳先生の本を取り上げます。ブックレビュー4冊目となる「やる気を出せ!は言ってはいけない」は、部下や生徒や子供など、自分の周りの人に変化を与えられる力を高めたい方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
職場などで「もっとやる気を出せ!」って言われたことはないですか?他にも「もっとしっかりやりなさい」、「常識で考えなさい」、「お客様と信頼関係をつくりなさい」、「社内のコミュニケーションをとりなさい」…などなど。これらは、相手を変えようとしてかけている言葉ですが、これらの言葉で相手が変わることは難しそうですね。
私の経験では、新入社員の頃によく先輩に言われた言葉で「もっとセンスを磨けよ」というのがあります。私のことを思ってのお言葉でしょうが、「センスって何?」ってなるだけで、何にも変わりませんでした。自分にはセンスがないということだけは分かりましたけど。今となっては、教える側のセンスもなかったのかなぁと思ってしまいます。
行動科学マネジメントというメソッドを使えば、このような問題を解決し、人を効果的に変えることができるのです。
どのように人の行動を変えるか
そもそも、人ってどういう時に変わったと言えるでしょうか?
それは「行動が変わったとき」です。具体的な行動が伴っていなければ、結局人は変われない。どんなにいいアイデアを考えていたとしても、行動が伴っていなければ、結果は絶対に変わらないからです。
では、「どのように人の行動を変えるか?」
行動科学マネジメントはその問いに答えてくれます。「ABCモデル」という概念があり、人が同じ行動を繰り返す心理的なメカニズムです。これを応用することで人の行動に影響を与えることができます。
「ABCモデル」は以下の要素からなっています。
- 先行条件(Antecedent)…行動を起こすきっかけ。
- 行動(Behavior)…行為、発言、ふるまい。
- 結果(Consequence)…行動によってもたらせされるもの。
ここからは、「ABCモデル」について理解し、そのあとに、私がABCモデルを実践してみた事例をご紹介します。最後までお楽しみに。
ABCモデル
ABCモデルのA、B、Cについて順番に説明していきます。

先行条件(Antecedent)
Aは、Antecedent(先行条件)です。ちょっとわかりずらいですよね。結果やニード(必要性)と理解してください。
人は良い結果が得られることをイメージできた時にはじめて、その行動を起こそうとします。また、ニード(必要性)を感じなければ行動しません。
例えば、お腹がすいた時に、食べるとお腹が満たされることがイメージできた時に、食べるという行動に結び付くのです。
「この行動をすれば、期待する結果が得られる」というイメージを作りだすことが重要です。正しい結果を定義し、それに結び付く行動を具体的に伝えることで相手は、何をすべきかが分かり、自発的に行動するようになります。
このように、Aの段階では、動機づけをしっかりとしてあげて、行動につなげます。
行動(Behavior)
Bは、Behavior(行動)です。
相手がどのような行動をとるべきなのかが分かるように具体的に伝える必要があります。その際に、MORSの法則を利用しましょう。
MORSの法則は以下の4つの項目から成ります。
- Mesured (計測できる):数値化できる行動か?
- Observable (観察できる):誰が見ても分かる行動か?
- Reliable (信頼できる):誰が見ても同じ行動になっているか?
- Specific (明確化されている):誰が何をどうしているかが明確か?
これらの項目をチェックしながら、伝えたい行動を表現しましょう。逆にこの法則に当てはまらければ、相手がどのように行動をとってよいか分かりません。伝える側が何をして欲しいかを具体的に、分かりやすく言語化できなければ、相手に伝わらないのです。ましてや行動をとってくれることなんてあり得ないのです。
このように、Bの段階では、言語化をしっかりとしてあげて、行動につなげます。
結果(Consequence)
Cは、Consequence(結果)です。
人間は良い結果が得られれば、それを学習し、同じ状況になったらそれを繰り返します。つまり、メリットが得られた行動は繰り返すということです。
例えば、食べるという行動によって、満たされた経験があれば、空腹になったときに、食べるという行動を再び繰り返すことになるのです。
また、人為的なメリットを作って、行動を強化(リインフォース)することで、期待する行動を繰り返させる方法もあります。例えば、販売店などでよく見かけるポイントカードです。客にとっては、店に来て商品を買えば、景品と交換できるポイントが貯まるというメリットがあるため、自ら進んでお店を繰り返し利用しようとするわけです。
このように、Cの段階では、行動を強化(リインフォース)してあげて、さらなる繰り返し行動につなげます。
以上が「ABCモデル」です。このモデルを利用すれば、人の行動を変えることができるはずです。
わが子でABCモデルを使ってみた
わが子は机の整理整頓が苦手だ。母親にいつも叱られている。そんな状況を変えてあげたくて、行動科学マネジメントを使ってみようと思いました。
行動科学マネジメント的には、子どもが机を片付けるという行動を自発的に、繰り返しとれるように環境を整えるというアプローチになります。
まず、「ABCモデル」に従って、現状を分析してみましょう。
A:結果やニード(必要性)
机をきれいにしたときの必要性やメリット、その結果を子どもと一緒にイメージします。すると、子どもの口からは、「気持ちがいい」、「物を失くしにくくなる」といった言葉が出てきました。いい感じ…。

片付けをすると、「きもちがいい」、「物を失くしにくくなる」。
やってみようかな。
B:具体的な行動
子どもと一緒に、良い結果につながる行動を考えてみる。とるべき行動を「寝る前に机の上に出したものを、元の位置に片付けて、机の上に何もない状態にする」とした。MORSの法則と合わせて、5W1Hを意識して考えるのもよいですよ。ポイントはできるだけ具体的に定義することです。

「寝る前に、机の上のものを片付けて、何もない状態にする」にしよう!
C:メリット
実際に行動したら、できるだけ早く結果を実感できることが大事。「気持ちがいい」は、すぐに実感できることだと思いますが、「物をなくしにくくなる」は、すぐには実感できない結果です。
すぐに感じられる結果が弱い場合は、人為的にメリットを作って行動を強化することをした方が良でしょう。
そこで、私はポイントカードを作って、メリットを増やし行動を強化することにしました。片付けられたら、スタンプを押して、スタンプがたまれば何か簡単なプレゼントする。スタンプは親が必ず押してあげましょう。そして大げさに誉めてあげましょう。子どもにとっては褒められるのが最大の報酬です。


片づけをすると褒められてポイントも貯まるから、うれしい。あと、机の上がきれいになって気持ちがいい。また、明日も片づけをやりたいな。
やってみた結果
あれだけ片づけができなかった子どもが、自分から進んで片付けていました。しかも楽しそうでした。そして、大げさに褒めてやると、照れたような笑顔を見せてくれました。親子で一緒に目標に向かっている一体感のようなものも感じられ、自分も楽しくなってきました。
いつでも・どこでも・誰でも、結果が出せる行動科学マネジメント恐るべしです。
まとめ
人を変えるには、行動を変えること。
行動を変えるには、環境を変えること。
誰だって最初はうまくできません。できない相手を責めるのではなく、相手の良さを引き出してあげるそういうリーダーになりましょう。みんなが仕事が楽しくなる、そんな職場も夢じゃない。
最後までお読みいただきありがとうございました。