フォークリフトで労働者を持ち上げたりすることについて書きたいと思います。
そんな危険なことをしていいんでしょうか?
でも意外とそのような経験のある方はいらっしゃるかと思います。
実は私もフォークリフトにパレットを載せて、その上に労働者を載せて高い天井の蛍光灯の交換をしたことがあります。それが良かったか、悪かったのかはこの記事を読めば判断できるようになるでしょう。
それでは行きましょう。
原則、フォークリフトで労働者を昇降させることは禁止
荷物を運ぶために設計されているフォークリフトで労働者を昇降させることは、非常に危険です。
したがって、フォークリフトで労働者を昇降させるという行為は、原則禁止となっています。
ただし、「労働者に危険を及ぼすおそれがないとき」であれば、フォークリフトを使って労働者を昇降させることが可能であると定められています。
事業者は、車両系荷役運搬機械等を荷のつり上げ、労働者の昇降等当該車両系荷役運搬機械等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。ただし、労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
労働安全衛生規則第百五十一条の十四
労働者に危険を及ぼすおそれのないときとは?
それでは、「労働者に危険を及ぼすおそれのないとき」とはどのようなときでしょうか?
以下の2つの条件に集約できると考えます。
- フォークリフトの転倒防止措置がとれていること
- 労働者の転落防止措置がとれていること
さまざまなリスクがありますが、この作業で絶対に回避すべきリスクは、労働者が高所から落下するリスクと考えました。そのためには、「フォークリフトが倒れない、労働者が落ちない」ように対策がとれていることが条件になります。
それぞれの条件について見ていきましょう。
フォークリフトの転倒防止措置がとれていること
フォークリフトは、荷物を持ち上げているときはバランスを崩し、転倒しやすくなります。
労働者を昇降させる際も同様です。
労働者を昇降させているときに、フォークリフトが転倒すると、非常に大きな被害につながるため、絶対に避けなければなりません。
それでは、フォークリフトの転倒防止措置として実施できることは何でしょうか?
適正な設計のゴンドラを使用する
労働者を乗せるためにゴンドラを使用することになりますが、このゴンドラによって、フォークリフトのバランスに影響が出て転倒する可能性があります。
以下の点に注意してゴンドラを選定すればよいと思います。
- 十分な強度があること
- フォークリフトの種類、使用状況等に適切なゴンドラであること
- バックレストとマスト等に挟まれないようにするための保護ガードがついていること
- フォークリフトの許容過重を超えないこと
- 墜落制止用器具のフックをかけられる場所があること
また、十分な知識や技術をもっていなければ、ゴンドラを自作することは避けるべきでしょう。メーカーによって適切に設計されたゴンドラであることが望ましいです。
試運転を実施する
ゴンドラを用意できたからといって、いきなり、労働者を持ち上げて作業を始めてはいけません。
実際に労働者を乗せて持ち上げる前に、試運転を実施し、ゴンドラやゴンドラの設置状態に異常がないこと、フォークリフトのバランスに支障がないことを確認しておきましょう。
労働者に教育を行う
安全上、労働者が注意しなければならないこともあります。何の知識もないままこの作業をさせることは非常に危険です。
例えば、労働者を乗せた状態で、フォークリフトを移動させないようにすることです。フォークリフトの移動は、労働者を必ず下ろしてから行うようにしましょう。
作業上の注意事項を徹底させましょう。作業手順書などに記載し文書化し、教育を行う対応が考えられます。また、事故発生時の対応も確認しておきましょう。
指揮者を設置し監視させる
指揮者(監視者)を設置し、危険な運転をしないように監視・注意させることも有効な場合があります。
労働者の転落防止措置がとれていること
次に、労働者の転落防止措置について説明していきます。
フォークリフトで労働者を昇降させるということは、労働者は高所にいることになるので、労働者が転落するリスクがあります。
高所からの転落事故は非常に深刻な結果につながるため、絶対に避けなければなりません。
では、労働者の落下防止措置としてできることは何でしょうか?
適正な手すりの備わったゴンドラを使用する
まずは、労働者の落下防止のために適切な手すりが備わっているゴンドラを使用する必要があります。
今回のケースに対して求められる手すりの高さの規定は具体的には定められていないのですが、手すりに関する様々な規格を参照しながら判断すればよいでしょう。
過去に手すりに関する記事を書いているので、参考にしてみて下さい。
ゴンドラの脱落防止措置をとる
ゴンドラごとフォークから脱落するリスクも考えられます。
ゴンドラとフォークをボルト等で固定します。そのような設計になっているものを使用すべきです。
フォークリフトは左右にぶれることもありますし、誤ってフォークを前傾してしまう可能性もあります。
作業計画を事前に確認する
フォークリフトを用いて作業を行うときは、あらかじめ作業計画を定め、これにより作業を行う必要があります。
労働者が柵から乗り出す必要がない、無理のない作業計画になっていることを確認しておきましょう。
労働者に教育を実施する
また、労働者が柵から乗り出して作業を行わないようにすることです。
これも、労働者に徹底させましょう。作業手順書等に記載するなど文書に残し、確実に実施できるように教育を行う必要があります。
保護具等を使用する
万が一転落した際に作業者を保護するために、ヘルメット、墜落制止用器具の着用も必要です。
必要に応じて、防護マットを使用することもよいでしょう。
まとめ
安全にフォークリフトで労働者を昇降させる際のポイントは以下の2点と考えます。
- フォークリフトの転倒防止措置がとれていること
- 作業者の転落防止措置がとれていること
フォークリフトで労働者を昇降させることは、法的には条件付きで認められていますが、個人的にはお勧めしません。
そもそも、フォークリフトは、労働者を持ち上げることを想定してつくられていないので、やはりそのように使用する際には、大きなリスクを負わなければなりません。
「労働者に危険を及ぼすおそれがない」と言える状態にするには非常に労力がかかりますし、そのような努力をするのであれば、人を昇降させるために設計された機器を使うことが賢明だと思います。
こんなテーマの記事と書いておきながら言うのもなんですが、個人的には、労働者をフォークリフトで持ち上げる作業はいかなる場合でも禁止にした方がいいのではと思っています。