攻めと守り
作業手順書の目的とは何だろうか?
それには「攻め」と「守り」の目的がある。
守りとしての目的
まずは、守りからいこう。
守りとしての目的は、「作業の質の安定」である。
作業の質がばらつくと、仕事の質「安全・品質・効率」がいつまでたっても安定しない。
そして、事故や災害、不良の原因になる。
では、仕事の質がばらつく要因は何だろうか?最も大きな要因は「人」だ。
個人差によるばらつき、体調や感情によるばらつき、人のパフォーマンスは一定しない。
作業手順書がなければ、誰もが好きなように作業をするだろう。皆がばらばらの作業手順で行うため、仕事の質は安定しない。
また、人の頭の中に作業手順を保存することになり、記憶を呼び出す際にエラーが起こる可能性がある。例えば、体調が悪かったり、慌てたりすると、忘れたり、勘違いしたりして、間違った作業手順を思い出すこともあるだろう。
作業手順書があることで、作業手順を文書として記録し、内容が固定される。それによって、上記のような、「人」によるばらつき要因を軽減してくれる。
また、作業手順書は教育にも利用できる。これもまた、同様に教育の際に生じる「人」によるばらつき要因を軽減してくれる。
作業手順書は、作業をばらつきから守ってくれるのだ。
これが「守り」の目的である。
攻めとしての目的
次は攻めについて。
一方、攻めとしての目的は、「作業の質の向上」である。
作業の質が向上すれば、仕事の質「安全・品質・効率」のレベルが向上する。
結果、より安全な職場が実現し、企業の好業績にもつながる。
では、作業の質を向上させるには何をすべきだろうか?
作業の質を向上させるには、まず今どんな作業をしているかを把握する必要がある。
作業の現状を把握することで、問題点を明らかにすることができる。そして、その問題点を解決すれば、作業の質を向上させることができる。
つまり、作業の現状把握ができていないと、作業の質の向上は始まらないのだ。
また、作業手順書を媒体として、多くの人との作業手順の共有が効果的にでき、これを題材とし、改善に向けたディスカッションも容易になる。
作業手順書は作業の質の向上に役立ってくれるのだ。
作業の質を向上させるためには、常に「作業をよりよくしてやろう」という、攻めの姿勢を失ってはならない。
これが「攻め」の目的である。
まとめ
作業手順書は作業の質のばらつきを安定させる。
作業手順書は作業の質のレベルを向上させる。
このように、作業手順書は、仕事の質のばらつきを安定させる「守り」の目的と、仕事の質のレベルを向上させる「攻め」の目的を併せ持ったツールなのである。
作業手順書を使いこなして、「仕事の質」の安定、向上を目指そう。
補足:「仕事の質」の向上を目指す理由
現場の作業者は、日々スケジュールされた作業と淡々とこなすだけになりがちですが(それだけでもすごいですが、)、実はそれだけでは、企業活動の目的としては不十分です。
企業活動の一部である現場作業も、企業の目的に沿った作業であるべきです。
企業の目的に沿った作業とは、以下の3つに集約されます。
- 安全と健康(Safety)
- 能率の向上、原価低減(Cost)
- 品質の向上(Quality)
企業の目的は、事業活動を通して利益を追求していくことであり、上記のような企業の目的に沿った、正しい作業の実行によって、安定した事業活動を継続することが可能となります。
もう少し分かりやすく、以下の表現でもいいでしょう。
「ムリ・ムダ・ムラのない順調な作業をおこなうこと」
ムリ:安全じゃない(Safety)
ムダ:効率がよくない(Cost)
ムラ:品質がばらつく(Qualilty)
これを、作業者一人一人が意識して、日々の作業に取り組めるようになるとよいでしょう。
